COLUMN
腸美容ラボ

2026.10.05

体温が下がると、腸内細菌の働きも鈍くなる~腸温活とたんぱく質の関係~

体温が下がると、腸内細菌の働きも鈍くなる~腸温活とたんぱく質の関係~
監修医 小林弘幸先生
小林 弘幸監修医

順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した“腸のスペシャリスト”。自律神経と腸を整える健康法を提案し、著書・メディア出演も多数。

監修医プロフィールを見る

腸内細菌にも“働きやすい体温”がある。仕組みを知れば、無理のない腸温活が始められます。

「平熱を測ったら35度台だった」——そんな経験はありませんか。日本人の平熱は、1957年の調査では平均36.89度だったといわれていますが、それから約50年後の2008年の調査では成人の平均体温が36.1度程度だったというデータもあり、日本人の平熱はゆるやかに低下傾向にあるようです※1。体温そのものを気にする人は多くても、その体温が腸内細菌の働きに直結しているという話はあまり知られていません。今回は「体温」と「腸」の関係、そして腸を温める習慣づくりについて紐解いていきます。

この記事の結論
腸を温める「腸温活」が注目される背景には、①腸内細菌や消化に関わる酵素には働きやすい温度帯があること、②体温が下がると筋肉や代謝を通じて腸の動きそのものが鈍くなりやすいこと、③食事によって体を内側から温める仕組み(食事誘発性熱産生)を活用できること、という3つの要因が関係していると考えられます。無理な食事制限や特別な道具は必要なく、日々の食事や生活リズムに「温める工夫」を一つ足すことが実践の第一歩になります。

腸内細菌・筋肉・体温の関係──なぜ「冷え」が腸によくないのか

結論
腸内細菌や酵素には働きやすい温度帯があり、体温が下がると腸の動き・代謝・熱をつくる力そのものが弱くなりやすいと考えられています。

腸内細菌にも「働きやすい温度」がある

腸内に棲む細菌たちは、周囲の温度に活動レベルが左右される性質を持っています。人の体内で働く酵素の多くは36.5〜37度前後で最も活性化しやすいといわれていて、腸内細菌が食物繊維を分解して短鎖脂肪酸を作り出す発酵の働きも、この体温帯であるほどスムーズに進みやすいと考えられています。興味深いことに、腸内細菌自身も発酵の過程で熱を生み出しており、その熱は安静時に体がつくる熱の中でも大きな割合を占めるといわれています※2。体温と腸内細菌は、いわば持ちつ持たれつの関係にあるようです。

体温の状態腸内での働きの目安
36.5〜37度前後酵素・腸内細菌が働きやすいとされる温度帯
36度前後酵素反応がやや緩やかになりやすいとされる
35度台発酵・分解のプロセスが鈍くなりやすいと考えられている

体温が1度下がると、腸はどう変わる?

体温が下がると、腸内細菌の働きも鈍くなる

医療現場での体温管理に関する研究では、深部体温が1度下がると基礎代謝や酸素消費量が5〜8%ほど下がるといわれています※3。基礎代謝が落ちれば、腸を含む内臓の働き全体もゆっくりになりやすく、便やガスが留まりやすくなって悪玉菌が優位な環境ができやすくなるともいわれています。「なんとなくお腹が重い」「以前より便通のリズムが乱れがち」という変化の裏に、こうした体温の低下が隠れているケースは少なくありません。

腸の“発熱係”は筋肉

体温を作り出しているのは主に筋肉です。ある研究では、安静時に消費するエネルギーのうち、骨格筋が占める割合は約20〜30%にのぼるといわれています※4。筋肉量が少ないと熱を作る力そのものが弱く、慢性的に体温が上がりにくい体質になりやすいということです。運動不足の人ほど腸が冷えやすいのは、単に体を動かさないからではなく、熱を作る“エンジン”が小さくなっているからとも言えるでしょう。

あわせて読みたい腸壁とバリア機能の仕組み|腸漏れとは?

食べるだけで体は温まる?「食事誘発性熱産生」とは

結論
食事そのものにも体を温める働きがあり、なかでもたんぱく質はほかの栄養素より多くの熱を生み出すといわれています。

体を温める方法というと入浴や運動をイメージしがちですが、実は食事そのものにも体を温める働きがあります。食べたものを消化・吸収するとき、体は栄養素を分解するためにエネルギーを使い、その過程で熱が生まれます。これを「食事誘発性熱産生(DIT)」と呼びます。ある研究のまとめによると、この熱の生まれやすさは栄養素によって差があり、たんぱく質はおよそ20〜30%、炭水化物はおよそ5〜10%、脂質はおよそ0〜3%と、たんぱく質が一番高い傾向にあるようです※5。

たんぱく質

「たんぱく質は動物性のほうが体を温めやすいのでは」と思われるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。ある研究では、大豆(植物性)たんぱく質の朝食と、ホエイ(動物性)たんぱく質の朝食、炭水化物だけの朝食を比べたところ、大豆・ホエイのどちらも炭水化物だけの朝食より食後の熱産生や満腹感が高く、両者にははっきりした差は見られなかったそうです※6。植物性のたんぱく質であっても、動物性と同じくらい体を温める働きが期待できると考えられます。

栄養素食事誘発性熱産生の目安※5
たんぱく質約20〜30%
炭水化物約5〜10%
脂質約0〜3%

日々の食事にたんぱく質をしっかり取り入れることは、腸内細菌が働きやすい体温を保つための土台づくりにもつながります。

「温かいスープ」×「たんぱく質」──理にかなった腸温活習慣とレシピ

結論
飲食物の温度による「外からの温め」と、たんぱく質による「内からの熱産生」を同時に満たせるのが、温かいスープ状のたんぱく質補給です。

冷たい飲み物より温かいスープの方が、飲んだ直後から体をじんわりと温めやすいのは想像しやすいのではないでしょうか。「温かいスープ」で外側からお腹を温めながら「たんぱく質」で内側からの熱産生をうながす——この2つを同時に満たせるのが、スープ状のたんぱく質補給という選択肢です。市販のスーププロテインのなかにはホットでもアイスでも楽しめるタイプもあり、寒い朝や体が冷えやすいタイミングの一杯として取り入れやすい形状のひとつといえるでしょう。

アプローチ期待される役割該当する習慣の例
外から温める飲食物の温度で直接お腹を温める温かいスープ、白湯、入浴
内から温める栄養素の代謝で体内から熱を生むたんぱく質中心の食事、運動による筋肉量の維持
両方を満たす外・内の両方から同時にアプローチ温かいスープ状のたんぱく質補給

そのまま飲むだけでなく、少しアレンジを加えることで日々の習慣として取り入れやすくなります。

青汁スープ

青汁スープ

どんな料理?
プロテインパウダーと青汁を豆乳やお湯で溶いた、まろやかで飲みやすいホットスープ。野菜不足解消とたんぱく質補給が同時にできる一品です。

どういう方におすすめ?
青汁の味が気になる方や、忙しい合間にサッと栄養補給したい方に。

あわせて読みたい自律神経と腸の関係|夏こそ腸温活

腸温活は美容にもつながる?腸と肌の関係

結論
皮膚-腸相関といって腸内環境と肌コンディションはお互いに影響しあうといわれており、腸温活は間接的に肌の調子にも関わる可能性があります。

腸は、肌の材料となるたんぱく質やビタミン類を吸収する場でもあります。腸の動きが鈍り栄養の吸収効率が落ちると、肌に必要な栄養がまわりにくくなることも考えられます。また、腸内で悪玉菌が優位になると、腸内環境の乱れが肌のうるおいやハリ感といった見た目の変化につながるとも言われています。腸を温めて動きを整えることは、めぐりめぐって美容面のケアにもつながる習慣といえるでしょう。

こんな人ほど腸温活を意識したい

結論
デスクワーク中心の方、冷房環境で過ごす時間が長い方、たんぱく質不足が気になる方ほど、腸温活によるケアの効果を実感しやすいと考えられます。
こんな傾向がある方考えられる背景
デスクワークが中心で、あまり体を動かさない筋肉量の低下により、熱を作る力そのものが弱くなっている可能性があります
冷房の効いた環境で長時間過ごすことが多い外気温によってお腹まわりが冷えやすく、腸への血流が滞りやすい状態です
手足は温かいのにお腹だけ冷たい“隠れ冷え”があるお腹まわりの血流が滞り、内臓の温度が下がっている可能性があります
食事が炭水化物中心になりがちで、主菜を抜くことが多いたんぱく質摂取量の低下により、熱産生の力が弱まっている可能性があります
疲れやすい、肌や髪の乾燥が気になるたんぱく質不足によって体温維持や筋肉量に影響が出ている可能性があります

上記に複数当てはまる方は、1食あたりの主菜を見直す、あるいは補食としてたんぱく質を手軽に摂れる飲み物を取り入れるといった工夫から始めてみましょう。

今日からできる腸温活習慣

結論
体温は朝に低く夜に向けて上がるリズムを持つため、時間帯に合わせた温活を、無理のない範囲で続けることが大切です。
時間帯取り入れたいこと
朝体温が最も低いタイミング。温かいスープやスープ状のたんぱく質補給で体温とたんぱく質摂取を一緒に底上げする
日中軽いウォーキングやストレッチで筋肉を動かし、熱を作る力を保つ
夜ぬるめの湯船(38〜40度)にゆっくりつかり、深部体温を上げてから眠りにつく
朝におすすめの「伸び上がり呼吸ストレッチ」
  1. 両手を組んで頭の上に伸ばし、息を吸いながらかかとを上げて全身をまっすぐ伸ばします(5秒キープ)
  2. 息を吐きながら腕を下ろし、上体を前に倒して背中とお腹まわりの筋肉をゆるめます(5秒キープ)
  3. 1〜2を3〜5回繰り返し、最後に深呼吸を3回行います

※すぐに立ち上がるのが難しい場合は座った姿勢のままでも構いません。強い痛みを感じる場合は無理をせず中止してください。

腸温活の効果は「続けること」が前提です。まずは2週間、無理のない範囲で続けてみましょう。1〜2ヶ月ほど続けると、便通のリズムや体調の変化を実感しやすくなるといわれています。なお、カイロの当てすぎによる低温やけどや、厚着のしすぎによる汗冷えには注意が必要です。体調に不安がある方や持病のある方、妊娠中の方は、自己判断で無理をせず、事前にかかりつけ医に相談したうえで取り入れることをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q. 腸温活は何から始めればいいですか?

まずは朝の一杯を温かい飲み物に変えることから始めるのがおすすめです。白湯や温かいスープなど、無理なく続けられるものを選びましょう。

Q. たんぱく質はどのくらい摂ればいいですか?

必要量は体格や活動量によって異なるため一概にはいえませんが、まずは主菜を抜かない食事を意識することが第一歩です。足りていないと感じたら、プロテインなどで手軽に補給するのもおすすめです。

Q. 運動が苦手でも腸温活はできますか?

激しい運動は必須ではありません。朝の伸び上がりストレッチのような軽い運動でも、筋肉を動かす習慣として役立ちます。

Q. どのくらいの期間で変化を感じられますか?

体質により個人差がありますが、まずは2週間程度、無理のない範囲で習慣化してみることをおすすめします。

まとめ

結論
腸内細菌や酵素には働きやすい温度帯があり、体温が下がれば発酵・代謝・腸の動きが鈍くなりやすいと考えられます。食事・筋肉・生活リズムという3つの角度から腸を温め直すことが、無理のない腸温活の基本です。

腸内細菌にも、酵素にも、働きやすい温度帯があります。体温が下がれば発酵や分解のスピードが落ち、筋肉量が少なければ熱を作る力そのものが弱くなる——腸温活とは、こうした体の仕組みに沿って、内と外の両方からお腹を温め直す習慣といえます。その手段のひとつとして、体を内側から温めるたんぱく質を、温かいスープという形で無理なく取り入れてみるのも良いかもしれません。まずは体温が下がりがちな朝の一杯や、簡単なストレッチから、今日の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

あわせて読みたい腸壁と栄養吸収の関係|腸漏れとは?腸壁ケアの基礎 あわせて読みたい腸活とダイエット|食べないダイエットはなぜリバウンドするのか あわせて読みたい美腸レシピ もっと腸美容を知る腸美容ラボ(腸活コラム一覧)

参考文献:※1 1957年の日本人平熱調査(田坂定孝ほか)と、2008年の体温に関する調査(テルモ株式会社)の比較に基づく報告より。/※2 Huus KE, Ley RE. Blowing hot and cold: body temperature and the microbiome. mSystems. 2021;6(5):e00707-21./※3 Wood T, Thoresen M. Physiological responses to hypothermia. Semin Fetal Neonatal Med. 2014;19(2):89-96./※4 Zurlo F, et al. Skeletal muscle metabolism is a major determinant of resting energy expenditure. J Clin Invest. 1990;86(5):1423-1427./※5 Tzeravini E, et al. Diet induced thermogenesis. Metabolism Open. 2024;22:100291./※6 Melson CE, et al. The effects of whey and soy liquid breakfast on appetite response, energy metabolism, and subsequent energy intake. Nutrition. 2019;61:179-186.