現代人はビタミン不足とよく言われますが、ミネラルについて意識しているという人は少ないのでないでしょうか。ビタミン同様、ミネラルは私たちの体に必要不可欠なものです。これまではあまり問題になってはいませんでしたが、最近は、偏った食生活などで、ミネラル不足に陥っている人が増えてきています。
骨粗しょう症、貧血、むくみ──ミネラル不足?
たんぱく質、炭水化物、脂質、ビタミンと並び、5大栄養素のひとつが「ミネラル」。体を構成する重要な成分であり、筋肉や神経の働きを調節したり、ビタミン同様、代謝にも深く関わるなど体の中でさまざまな働きをしています。ミネラルの必要量はごくわずかですが、とても重要。不足すると、欠乏症になり、病気を引き起こすことにもなります。骨粗しょう症にはカルシウム不足が関与していますし、鉄分が不足すると貧血を起こします。カリウム不足は体のむくみの原因に。そして、残念なことにミネラルは体の中ではつくり出すことができないため、食事から補うしかないのです。
わたしたちの体に必要な16種類のミネラル
ひと口にミネラルといっても、実はたくさんの種類があります。というのも、ミネラルとは、地球上に存在する元素のうち、水素、炭素、窒素、酸素の4つをのぞいたものの総称なのです。そのなかで、私たちの体に存在し、栄養素として欠かせないもの、としてわかっているのが16種類のミネラル。マグネシウム、カルシウム、リン、イオウ、塩素、カリウム、ナトリウム、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、セレン、ヨウ素です。そのなかで、厚生労働省が摂取基準を決めているのが、イオウ、塩素、コバルトを除く13種類のミネラルになります。
ミネラルは、不足しても多すぎてもダメ
最もよく知られているミネラルに、カルシウムがあります。骨や歯などの原料になるだけでなく、血液の凝固や筋肉の収縮などにも関与。「そのイライラ、カルシウム不足かも」といわれるように、神経の興奮を抑える働きもあり、不足すると、骨密度の低下や骨粗しょう症の要因に。貧血気味の人や妊婦にとっては鉄分も重要なミネラル。鉄は、赤血球の材料となるため、月経の際や妊婦に鉄欠乏性貧血が起きやすくなります。一方、とりすぎて問題になるミネラルがナトリウム。過剰な摂取は高血圧や脳卒中などの生活習慣病の原因に。ミネラルは多すぎても少なすぎてもダメなのです。
カルシウム、マグネシウム、亜鉛は万年不足状態
「平成25年の国民健康栄養・調査(厚生労働省)」によると、もっとも摂取量が不足しているのがカルシウムです。20年前と比べてみると、どの年代も摂取量が大きく減少していて、全体的に推奨量の6割ほどしかとれていないのが現状のよう。特に20代〜30代の女性は、平均で毎日100mg以上足りていません。若いうちはこれといった症状が出ることはほとんどありませんが、加齢とともにダメージが表面化する可能性が高くなります。同様に、カリウムと亜鉛も不足傾向にあり、月経がある女性に限ると鉄分も大きく不足しています。
ミネラル不足は、食生活の乱れと変化にあり?!
以前は、問題視されることがなかったミネラル不足がここ数年、増えているいちばんの要因は、やはり食生活の変化。例えば、ランチはコンビニのおにぎりやサラダ、総菜パンなどや、ハンバーガー、ラーメン、カレーなどのファストフードですませる人が増えています。野菜が極端に少ない食事が多くなったり、乳製品や小魚などをとる機会が減っていたり。20年前と比べて、男女ともたんぱく質の摂取量が減っているのに対し、脂質の摂取量は増加中、野菜摂取量も60〜70代以外は大幅に不足しています。食生活の乱れや偏りは、ミネラル不足も招いてるのです。
「百害あって一利なし」の有害ミネラルとは?
一方で、体に有害なミネラルも問題になっているのをご存じですか? ヒ素や水銀、鉛やカドミウム、アルミニウムなどの、いわゆる有害金属(ミネラル)です。土や海水に含まれていて、そこで育つ魚や肉、野菜などの食品とともに少しずつ私たちの体の中に入り、やがてさまざまな不調を招くことに。体には「解毒」機能が備わっているので、体内に入っても便や尿のなかに排出されますが、体内に蓄積されたこれらの有害ミネラルは、活性酸素を増やしたり、臓器に貯まり障害を起こすもとにもなります。まさに、「百害あって一利なし」のミネラルなのです。
以前の「解毒ブーム」は、この有害ミネラルに端を発し、体に不要なものを取り除くという健康法として、デトックス(解毒)という言葉とともに広まったものです。この有害ミネラルを体外に排出させるには、αリポ酸や含流アミノ酸などのキレート系サプリメントが有効だとされました。キレートとはギリシャ語でカニの爪という意味で、水銀や鉛などをカニ爪で挟むように吸着して排出を促すということをあらわします。
期待のフルボ酸が、「害」を排出する?!
そして、この“キレート効果”で注目されているのがフルボ酸です。フルボ酸とは、土壌になかにある有機酸のこと。長い長い年月を経て、植物などの死骸が土壌に堆積して、微生物によって分解された腐植土壌の中に微量にある貴重な有機酸で、さまざまなミネラル(微量元素)の集合体だといわれています。このフルボ酸に、キレート作用があることがわかってきて、体内の有害ミネラルを排出する効果が期待されているのです。もちろん、植物由来のミネラルの集合体であるフルボ酸はそれ自体の栄養価も高いと考えられています。
ミネラルは「補給」と「排出」を意識して!
体のために必要なミネラルは積極的に補い、有害なミネラルは排出することを常に心がけたいものです。不足しがちなカルシウムを効率よくとるには、牛乳やヨーグルトなどの乳製品、豆腐や納豆などの大豆製品、小魚や海藻、わかめなどの海草類、緑黄色野菜などがおすすめ。カリウム不足には、ほうれん草やアスパラガス、ブロッコリーなどの野菜やアボカド、いも類や果物、海草類を。鉄分は、かつおやまぐろなどの魚類や、カキやレバー、卵や大豆製品などに多く含まれています。食事でとるのが難しい場合は、サプリメントを利用するのも手です。
一方で、フルボ酸やαリポ酸などで体内の有害ミネラルを追い出しましょう。有害ミネラルは活性酸素を増やすため、抗酸化作用のあるビタミンCやEなどの抗酸化ビタミン、亜鉛やセレンなどの抗酸化ミネラル、植物の色素や苦みの成分ポリフェノールなども効果的。「補給」と「排出」を心がけて、体内のミネラルバランスを整えましょう。