最近、食材や食品を選ぶ際に“オーガニック”かどうかを気にする人は増えているのではないでしょうか。食品や加工品に含まれる添加物が気になり、食品を買うときに、成分表示をチェックする人も多いはず。でも、実際に何が良くて何が問題なのでしょうか。オーガニックと食品添加物について正しい知識を身につけて、より健康的な食生活を目指しましょう。
有機肥料を使って育てる農法=オーガニック
オーガニック食品と聞いてどんなイメージを抱きますか? 体にいい、不純物がなくて安心、おいしいと思う人もいれば、基準があいまいで体にいいのかわからない、値段が高いと感じている人もいるようです。
オーガニックは有機栽培と同じ意味で、農薬や化学肥料に頼らずに有機肥料を使い育てる、土壌の持つ力を生かして栽培する“農法”のこと。オーガニック食品とは、その農法を用いてつくられた農作物や畜産物や、それらを使った加工食品などを指します。
認定された食品は、有機JASマークが目印
日本では、以前は明確な基準がなかったのですが、2001年に日本農林規格(JAS)が改正され、登録認定機関の認定を受けた農家などが生産したものに限り、有機(オーガニック)JASマークがつけられるようになりました。ちなみに現在は、農林水産省が認めた69の認定機関があり、JASマークの下にその認定機関名が記されています。
オーガニック=無農薬ではありません
オーガニックと認定されるには、「多年生の野菜は3年間、それ以外は2年間、農薬や化学肥料を使っていない土地を使うこと」「農薬や化学肥料に頼らず、有機肥料で栽培する」「遺伝子組換え原材料は使用しない」「化学的な処理や合成物添加の使用を制限する」などの条件をクリアする必要があります。
ただし、農薬をまったく使わないというわけではなく、JASが認定した31種類の農薬の使用は認められています。つまり、厳密にはオーガニック=無農薬ではありませんが、極力農薬を使わず、自然な方法でつくられた安心安全な農作物といえるでしょう。味や栄養価についての研究も行われていますが、一概にオーガニックだからといって味や栄養価が高いとはいえないようです。
「無農薬野菜」という表示は禁止に
ちなみに「無農薬野菜」という表記もあり、かつては、栽培期間中に農薬を使っていないという意味で使われていましたが、現在では、農林水産省のガイドラインで使用が禁止されています。無農薬というと、一切の残留農薬等を含まないという間違ったイメージを与えてしまうから、というのがその理由。つまり、0.1mgでも土壌に農薬が含まれていれば、無農薬とはいえないじゃないか、というわけです。代わりに、「栽培期間中農薬不使用」「栽培期間中に農薬を使用していない」などの表示は許されています。
オーガニック加工品も続々登場!有機JASマークで確認
オーガニック食材には、米などの雑穀、野菜や果物などの農産物のほかにも、牛肉や鶏肉等の畜産物もあります。それらを使った、ドライフルーツやジュース、納豆や味噌、パンやパスタ、ハムやソーセージ、オリーブオイルやココナッツオイルなどのオイルなどさまざまな食品があり、認定されると有機JASマークの表示が許されます。
生産者にとっては、有機肥料で土地を耕し、周囲から農地に農薬が飛んでこないよう工夫したり、種や肥料、栽培や出荷状況を記録したりと、オーガニック食材の生産はかなり手間のかかる作業です。その分、価格も高くなるのかもしれませんが、でも、海外を見ると、特に欧米のスーパーマーケットなどには、オーガニック商品が溢れていて価格もほかの商品と変わらないことが多いよう。消費者にとっては他の食材と比べて残留農薬の心配が少なく安全安心なオーガニック食品が、今後、もっと広まっていくことを期待したいですね。
保存料を使っていても「無添加」表示が可能?
一方で、最近、目立つのが「無添加」という言葉。こちらも安全安心なイメージが漂いますが、実際には何が添加されていないのかがちょっとわかりにくいですよね。実はこの言葉の使われ方はかなりあいまいで、一般的には、食品添加物を使用する食品なのに添加物を使用していない場合、無添加と表示できるというのです。保存料は使っているが着色料は使っていない、といった場合、「着色料無添加」ではなく、ただ「無添加」と表示しても法的に問題はないといいます。
つまり、保存料が使われていても着色料が使われていなければ、「無添加」と表示できてしまうというわけです。なかには、もともと保存料が入っていない商品にあえて「無添加」表示をつけているものも。「無添加」は、添加物が何も入ってないという意味ではないので、注意が必要です。
むやみに添加物を恐れず、あいまいな「無添加」に注意
ただし、添加物=悪、というわけではありません。そもそも食品添加物は、食品を作る際に、加工したり、保存したり、味をつけたりするときに使う調味料や保存料、着色料などをまとめて食品添加物と呼びます。食品衛生法では、「食品添加物とは、食品の製造過程で、または食品の加工や保存の目的で食品に添加、混和などの方法によって使用するもの」と定義されています。安全性と有効性を科学的に評価し、厚生労働大臣が認めたもののみ、食品添加物として使用できるように決められているのです。
また、食品添加物というと科学的な合成物というイメージがありますが、実は「天然」、「合成」の区別はなく、400種類以上の天然添加物が食品添加物として認められています。バニラや桃、ミントやハーブなどの天然香料や、通常食品として用いられる寒天や小麦粉、ココアなども添加物になります。
つまり、必要以上に添加物を恐れるのではなく、と同時に、あいまいな「無添加」表示を鵜呑みにすることなく、きちんと食品を選ぶ目をもつことが重要です。食品に表示されたマークや言葉にどのような意味があるかを理解して、賢く選びましょう。