食物繊維ってなぜわたしたちの体に必要なの?
お通じのためにも、体のためにも食物繊維をとりなさいって、いいますよね。でも、食物繊維ってなぜわたしたちの体に必要なの?と思ったことはありませんか。実は、1970年代ぐらいまでは食物繊維は、あまり価値のないものとされてきました。ところが、いまではわたしたちの体に必要不可欠な栄養素といわれています。食物繊維のパワーに迫ってみましょう。
食物繊維が少ないと病気のリスクが高まる?
それまで必要ないといわれていた食物繊維にスポットライトがあたるきっかけは、食物繊維をとる量が多いとがんや病気のリスクが減るという報告がなされたこと。便が腸内で留まることで病気になるリスクが高まることがわかり、便の排出を促す食物繊維が注目されることになったのです。その後、新たな健康効果が次々と明らかになり、日本では2000年から国により、食物繊維の摂取目標量が定められました。
食物繊維と聞いて、どんなものを想像しますか?れんこんやごぼうの筋っぽいところを思い出す人もいれば、ファイバードリンクを思い浮かべる人もいるかもしれませんよね。実は食物繊維は、水に溶ける水溶性と水に溶けにくい不溶性のものがあり、形状も性質も異なります。共通しているのは、わたしたち人間の消化酵素で消化されない成分ということ。野菜や海藻、穀類や豆類などさまざまな食材に含まれています。
食べすぎや血糖値の上昇を抑える水溶性
水溶性の食物繊維は、水分と混ざりネバネバの粘度を高めて便を軟らかくして、スルッと排せつさせるのに役立ちます。ゼリー状になって胃腸内をゆっくり移動するので、お腹がすきにくくなり、食べすぎを防ぐ働きも。一緒に食べた糖質を腸から吸収されるのをゆるやかにして血糖値の上昇を抑える作用もあります。
また、食物中のコレステロールや胆汁酸の吸収を抑えるため、LDLコレステロール値を抑える働きも報告されています。さらに、水溶性食物繊維は大腸内で善玉菌のエサになり、ビフィズス菌を増やして悪玉菌を減少させ、腸内フローラのバランスを整える働きもあるのです。
便通を促して、有害物質を排出する不溶性
不溶性の食物繊維は、穀類や野菜、豆類に多く含まれていて、糸状の繊維で表面はザラザラしています。水溶性の食物繊維は、昆布やわかめなどのネバネバっとした部分や、リンゴやレモンなどの果物に多く含まれます。食材のなかにはごぼうのようにこの両方の食物繊維を含んだものもあります。
不溶性の食物繊維は、胃や腸で水分を吸収して大きく膨らみます。それによって腸の蠕動(ぜんどう)運動を活発にして、便通を促すのです。便のかさも増え、排便が促されます。有害物質を体の外に排出するので、大腸がん発生のリスクが減少するという研究報告もあります。
毎日5〜6gも足りてない!
便通を良くして腸をキレイにするだけでなく、こんなに体にいい働きをする食物繊維。それなのに、なんと日本人の食物繊維の摂取量は、毎日足りていません。1日に必要な目標摂取量は、成人男性で20g、成人女性で18g以上ですが、実際の平均摂取量は、30代で男性13.5g、女性12.6gと、5.5g~6.5gも不足。どの年代でも目標量に達していません。また、不溶性食物繊維に比べて水溶性食物繊維の摂取量が少ないという指摘もあります。
不溶性食物繊維は根菜類の野菜や豆類に多く、水溶性の食物繊維はリンゴや桃、こんにゃく、海藻に多く含まれます。
食物繊維の多い食材、強化食品をプラスして
食物繊維の多い食材は、野菜ならごぼう、菜の花、アボカド、たけのこ、かぼちゃ、春菊、とうもろこし、ほうれん草、ブロッコリーなど。ごぼうの食物繊維は100gあたり5.7gなので、目標量をとるには1日に約1本半ほど食べなくてはなりません。菜の花なら2束半、アボカドなら2個半、レタスなら3玉必要に。穀物では、大麦が100g中9.6gとダントツで、白米に大麦を混ぜたご飯なら効率良く食物繊維がとれそう。ひえ、あわ、キヌア、アマランサスなど最近話題の穀類も食物繊維を補うにはうってつけです。
朝食を抜きがち、外食が多い、野菜がなかなかとれない、海藻や豆類を食べていないという人は食物繊維が不足しがちかも。また、便秘がちだったり、便が固くて黒っぽいというのも足りていない証拠です。意識して食物繊維をとるようにしたり、食物繊維を強化した食品などを利用するのもおすすめ。「毎日の食事に+食物繊維」を心がけましょう。