Dr.'s Natural recipe

『More Natural.』ココロとカラダのために、できること。〜 第2回 スタイリスト・倉岡晋也さん〜

2020.12.25

さまざまなフィールドで輝くウェルネスの達人たちより健やかな毎日を送り、

心身を美しく整えるための「秘訣」を自由に語っていただくスペシャルコンテンツ。

第2回にお迎えしたゲストは、パリにお住まいのスタイリスト・倉岡晋也さんです。

 

「どんな環境にあっても健やかに生きるためには、

なるべくストレスをかけず、一日一日を楽しむこと。」

倉岡晋也さん

 

 

【みんなで囲むテーブルを演出するという楽しさ。】

僕は、ファッションだけでなく食のスタイリングも手がけますが、ふたつに共通しているのは「色」「質感」「抜け感」を意識すること。

食のスタイリングで「色」をどう取り入れるかというと、僕の場合、食器ではなく食材の色を活かすことが多いです。食器はマットな質感ものも好き。「質感」のコントラストで料理がみずみずしくおいしそうに見えるから。

そして、食での「抜け感」は、例えばレンゲにお漬物をのせたり、ガラスの容器に納豆を入れたりと、意外性を持たせること。ちょっとした工夫で、普段の何気ない料理も新鮮に映るので、みんなに、もっと気軽にフードスタイリングを楽しんでほしいです。

 

 

そもそも僕が食に興味を持つようになったのは、父親が板前なので小さいころから「食」が生活の中心にあったこと。

そして、ファッションの仕事でつながった人との背景にもいつも「食」があったこと。みんなでひとつのテーブルを囲む、それを自分で演出するというのがすごく楽しくて、テーブルスタイリングも手がけるようになったんです。

 

 

【まずは自分個人の考えや思いを大切にする。】

仕事も暮らしもずっと東京でしたが、2018年からは、パートナーが暮らすパリに生活の拠点を移しました。

ちょうど仕事で変化があって、今までのライフスタイルに違和感を感じていた時期だったので、ご縁に背中を押された感じですね。

実は、パリどころかヨーロッパも初めて。

それまで僕はヨーロッパの文化に特別思い入れがなく、中学生くらいからアメリカのブラックミュージックやファッションに影響を受け育ってきました。スタイリストとして独立する以前には、ダンススクールで講師もしていました。

 

 

固定概念のないまま、パリでの生活が始まりカルチャーショックの連続です。いまはパリコレブランドの運営に携わりつつスタイリストをしています。

こちらでは、自分のビジョンを明確に出来ないと対等にコミュニケーションが取れません。いろいろな人種が入り混じっていて多様な考え方があるので、みんながそれぞれを理解しないと前に進まないんです。だから、協調性も大事にしながら、まずは自分個人の考えや思いを大切にするようになりましたね。

 

 

【「たまにはいいよね」っていう緩さも大切。】 

パリに来てからは、食習慣も変わって、野菜を中心に魚や卵、蜂蜜、乳製品をとる「ペスカトリアン」になりました。きっかけは肉食による環境負荷を考えるようになったことだけど、胃もたれしなくなってカラダの調子もいいです。

パリではお店のメニューにも当たり前のように、ベジタリアンとかビオとかグルテンフリーとかがカテゴリとして明記されていて、いろいろな食習慣が受け入れられているんだなぁと思います。

自宅では、大豆ミートをお肉がわりにして親子丼を作ったりもしていて、それはそれで楽しいしおいしいんですけど、やっぱり肉が食べたくなる日もあるんですよね。

僕は何事に関しても、決め事を作るのがすごく苦手で、「こうしなければいけない」と思うとプレシャーに感じてストレスがたまるので、「たまにはいいよね」っていう緩さも大切にしています。だから、食べたい時には肉も食べるんですが、たまの肉にすごくありがたみを感じるようになりましたね。

 

 

あと、食事以外に日々意識していることは、毎日ちゃんと湯船に浸かってカラダを温めることかな。住んでいるアパートには小さいけれどバスタブがついているので、あら塩とアロマオイルを混ぜたバスソルトを入れて毎日ちゃんと湯船に浸かっています。

湯船の中に潜ってブクブクするのが長年の習慣というか一種の儀式なんですが、これをやると全ての情報をシャットアウトできて、胎児に戻ったように思考がリセットできるんです。

あとは、よく歩くこと、歌うこと、踊ること……その日の気分や感覚に合わせてやっています。毎朝アラームをかけないのも「決め事」が苦手だから。できるだけ自然のリズムで生きていきたいんです。

 

【今だから「一日の中にハイライトを作ること」を意識して。】

そうは言っても、今はコロナ禍。ロックダウンで、せっかく慣れてきたパリでの暮らしも大きく変わってきました。

ただ、それによって自分の大切なものが明確になったというか、人とのリレーションシップや社会での役割、それと毎日の食がやっぱり大事なんだとか、気づきもあって。コロナ禍で暮らしをつまらないものにはしたくない。

だから「一日の中にハイライトを作ること」を意識して、食事を丁寧に作ったり、おしゃれにスタイリングしたり、テーブルスタイリングを楽しんだり、お弁当を持ってピクニックに出かけたりもしています。

マスクがあって服のスタイリングも難しいけれど、ほうれい線隠れて若く見えるから(笑) 普段は着ないようなストリートファッションを楽しんだりできると思えば悪くない。

どんな環境にあっても健やかに生きるためには、なるべくストレスをかけず、一日一日を楽しむことだと思ってます。

 

 

今後は、仕事の拠点と家族の拠点とはまた別に、もう一つ拠点を持ちたいと考えているんです。

東南アジアが好きで、以前はよくバックパッカーで旅をしていたんですけど、その中でもカンボジア南部のカンポット州がとても気に入って、そこに住んでみたいなと。

3月と9月のパリコレシーズンはパリ、寒い時期はカンボジアで過ごすという生活が理想的。ライフスタイルに合わせて場所を選択し、価値観が凝り固まらないオープンマインドな暮らしを楽しんでいきたいです。

何も持たなくても心が豊かでいられるような、ベーシックな暮らしを楽しんでいきたいです。

 

 

 

倉岡晋也/くらおかしんや

スタイリスト。アパレル業界でセールスやプレスを経験したあと、スタイリストとして活動を開始。ファッションだけでなく、食にまつわるテーブルスタイリングも手がける。また、スタイリストとしてテレビへの出演も。2018年からフランス・パリに拠点を移し、活動を展開している。